私がハマったギャンブルはパチンコです。
初めてホールに入ったのは、学校卒業後に就職したときです。
新人指導を担当してくれた先輩社員が大のパチンコ好きで、彼に連れて行かれたのがパチンコ屋で、そこで私は初めてギャンブルを体験しました。
パチンコに限らずギャンブル全般が好きな先輩がパチンコにハマっていたのは、当時の換金率が高く、稼げるからと言いました。
私はパチンコのルールが全くわからず、最初は先輩の横について眺めていました。
先輩が打ち始めて数分後、台から賑やかな光と音楽が鳴り、台からパチンコ玉が溢れ出してきました。これを「当たり」と言って、打てば打つほど玉が出てきます。
「当たり」を引いた先輩は、溢れてくる玉を箱に何度も詰めます。その数はどんどん増えるにしたがい、先輩の興奮度が上がっているのが見ている私にも伝わりました。
数日後も先輩にパチンコ屋へ連れられ、今度は私も先輩の横で挑戦しました。
事前に先輩がルールを教えてくれたので、台の前に座っても緊張がありません。
玉を買って打ち始めるも玉は、私が入れたいと思うところに入らず、台に吸い取られていきます。
先輩は前日と同じで、「当たり」を引いて、台の周りに玉入りの箱を重ねていきます。
私に「当たり」がきたのは、打ち始めてから1時間後でした。
台から音楽が流れ、中のコマみたいなものがぐるぐる回ります。
ルールを知っても、その場面に遭遇するのが初めての私は驚き、先輩に助けを求めました。
先輩は「よしきた、おちつけ! これは『リーチ』というやつで、ぐるぐる回っているところで数字が揃ったら『当たり』になる。当たったらどんどん打っていけ。『当たり』が終わるまではどの穴にでも玉が入るから」と言って、私を落ち着かせます。
私は先輩の指示にしたがい、ぐるぐる回る部分に目を向け、当たるのを待ち構えました。
当たるチャンスは3回で、その間に当たらなければ『リーチ』は終わり、打ち始めに戻ります。
1回目は「3・9・7」で「ハズレ」に、次も「ハズレ」に終わり、見ていた先輩は、「これはダメだ」と言って、自分の台に戻りかけます。
先輩に言われて私も諦めていた3回目に入ると、「7・7・7」、と数字が揃ったとき、大音量の音楽が鳴り、台から眩しい光が飛び出しました。
音楽と光に圧倒された私がボーゼンとしていると、「当たったぞ」と言う先輩の声が耳に飛び込みました。
「とにかく打て」という先輩にしたがい玉を打つと、打った以上の玉が台から溢れ出してきました。
横に座っていた先輩は、私に箱を渡し、「溢れそうになる玉を箱に入れていけ。放っておくと台からあふれて、床に散らばるぞ。受けろ」、と言います。
私は言われるまま玉を打ちながら、台からあふれる玉を箱に受け始めました。
その作業が終わるまでどのくらい時間がかかっていたのかわかりませんが、とても長く感じたのと、台から玉が出る光景と、玉が詰まった箱が積み重なったのを見て、経験したことのない興奮を覚えました。
台から音楽が鳴り止み、光が消えても興奮はいっこうに冷めません。でも興奮は後になってさらに増してきました。
玉の入った箱を受付に持っていき、玉数を数える機械に玉を放り込みます。
ゼロを指していた数字が、桁数がどんどん上がりました。そのスピードは早く、見ているだけでドキドキさせられます。
数え終わると取得した玉数に応じて、受付が何かを私に渡しました。それは、長方形で平べったい、手のひらに収まるほどの大きさをしたプラスチック製の箱です。
「これは魔法の箱」、と先輩はニヤニヤしながら言いながら、私をあるところに連れていきます。
「この箱をあそこの受付に出せ」と言う先輩の指示にしたがい、受付に箱を出すと、現金10万円が差し出されました。
あれだけの時間で10万円が得られた経験に、興奮が最高潮に達しました。
このとき、なぜ先輩がギャンブルにハマるのか? その理由が理屈でなく、身をもって体験して理解できました。